9/4(土)
 朝から頭痛と吐き気がおさまらない。実際吐いてしまったのは、お昼過ぎ。NST(胎児心音監視装置)を装着し様子を見る。一時間後大きな張りはないしベビーは元気よく動くので、心配ないと看護婦さんは言った。その後エコーも撮ってもらい、胎児の推定体重、1895g。あまり成長はしていないけど、胎盤や臍帯などは正常に機能しているとの事。ひとまず安心する。

9/5(日)
 昼食後、急変。頭が真ん中から割れるような痛みと、激しい吐き気。嘔吐も繰り返し、胸が圧迫されているように感じ、息も苦しく呼吸困難に陥る。意識が遠のく。気づいたら4人部屋から個室に移動していた。モニター心電図がつけられている。意識が戻って、まず赤ちゃんが無事だったのか不安になる。そばにいた看護婦さんに聞いてみると「赤ちゃんは大丈夫よ。安心してね」といってくれた。「だんなさんに連絡して来てもらいましょうか?」と聞くので、「いえ、私も落ち着いたし、赤ちゃんも大丈夫なようなので、連絡しなくっていいです」と答える。しばらくしてまた別の看護婦さんが来て、「部屋が変わった事や、症状説明などがあるので、やっぱりご主人に連絡しました。8時過ぎ頃に来てくれるそうです」との事。だんなに申し訳なく思う。
 血圧を上げないために真っ暗にした個室の中で、ただ時間が過ぎるのを待つ。夕飯もあまり食べられず、おかずのみをちょこちょこつつく。8時過ぎだんなが駆けつけてくれた。顔を見たとたん、泣き出してしまった。「どうした?痛いのか?」と聞くだんなにしゃくりあげながら「怖かったの。すごく。律っちゃんだめになっちゃうかと思って、怖かったの」「お医者さんが心配ないって言っているんだから、心配しちゃだめだよ。泣くと血圧上がっちゃうよ」そう言われても涙が止まらない。いい年をして子どものように泣きじゃくってしまった。時間とともに落ち着いてきたので、だんなが「ナースステーションにだれもいなかったからそのまま来ちゃったんで、ちょっと声を掛けてくる」と言って部屋を出ていった。ちょっとと言った割りには長い時間帰ってこない。しばらくして戻って来て、「先生がいて、話してきた」という。2キロ弱の胎児だが、もともと妊娠中毒症の状態で育った胎児は肺に負荷がかかっているので鍛えられており、早めに帝王切開しても自力で呼吸ができるということ。現在は良好でも、急激に母胎の臓器全般に異常が現れるヘルプという状態が考えられること。全体から考えたら、早く出すことが悪いことではないことなど胎児の現状と体の状況を事細かに説明され、その場で帝王切開と輸血の承諾書にサインしてきたそうだ。10時までならいてもいいと看護婦さんが言いに来てくれた。忙しい合間にお見舞いに来てくれるだんななので、普段は用件のみを話してすぐ帰ってしまうが、今日は少しゆっくり話しが出来た。気分が大分落ち着いてきたので、9時半頃にだんなは帰って行った。

9/6(月)
 緊急帝王切開の可能性があるので、朝ご飯は出ないと聞いていたが、朝検温にきた看護婦さんは食べていいと言う。あまり食欲はなかったが、無理をしてなんとか1/3位をゆっくり食べる。午前中、主治医の先生が、「胎児の方は異常ないが、母体のこれからの妊娠継続が難しいと思われるので、やっぱり今日緊急帝王切開を行ないましょう」と言われた。思いっきり不安になる。まだ、34週に入ったばかり。大丈夫なのだろうか?しかし、自分でもこの先またこんな症状が出て、もし胎児が危なくなったらと考えるとその方がよっぽど怖い。先生の「いいですね?」との問いに「はい」と答える。
 朝ご飯を食べてしまったので、手術は午後になると言う。血圧上昇予防のためアイマスクをつけ、輸血のための血管確保の点滴を入れられ、剃毛してもらい、酸素吸入をし、NSTを装着。胎児の心音を聞きながら、ひたすら手術の時間が来るのを待つ。午後になってだんなが来てくれた。連絡を受け、私が不安そうなので、早目に来るように言われたそうだ。担当医がやってきて簡単な説明を受ける。売店で分娩セット券を買って来てくれるようにだんなに頼み、ナースステーションへ持っていってもらう。産まれたら実家と元いた会社と今日お見舞いに来てくれるはずになっていた友人に知らせてくれるように頼んだ。必要事項を話し終えると、だんなはシンクパッドを持って来て、キーボードを叩いている。ときおり手を止めてNSTの胎児の心音に聞きいっている。静かな個室にもうすぐ産まれてくる律の心音だけがやけに大きく聞こえる。
 手術の正確な時間が2時半であるという連絡が入る。2時になってだんなに病室の外に出てもらい浣腸をしてもらう。もともと腸の粘膜が弱い私なので、すぐにトイレに行くが点滴やモニター心電図の機械類に邪魔をされ失敗。トイレを汚してしまった。掃除する暇もなくストレッチャーが用意される。
 2時20分、ストレッチャーに乗せられ部屋を出る。エレベーター前でだんなが待っていた。トイレの掃除を頼む。いざとなったら、度胸がすわるいつもの私のパターンを確認しただんなは安心したようだ。看護婦さんが「がんばってね」と声を掛けてくれた。「私が頑張る必要無いみたい。律っちゃんの方が強そうだから」と笑って答えた。覚悟は出来た。
 2時25分、エレベーターに乗せられて2階の手術室に向かった。準備室で病棟のストレッチャーからオペ室のストレッチャーに移り、術衣を脱がせてもらう。オペ室へ移動し、手術台へのせかえてもらう。いよいよ開始だ。横向きになりえびぞりに体を反らせ、背中の腰椎部に麻酔をうつ。麻酔が効くまでちょっと時間がかかると言われ、ただ待っているだけかと思ったら、何人もの先生やら看護婦さんやらが、一斉に準備に取り掛かる。両手を肩と平行に広げられ、まるでキリストの十字架の張りつけの図。点滴の管やら、導尿の管やらをいっせいに体に入れられる。15分くらい立ったろうか、冷たい消毒綿でおなかから胸のあたりまでさっと拭かれ、冷たく感じるかを聞かれる。肩のあたりで感じたので、そう告げる。オペ前の麻酔科の先生の話しでは全身麻酔で手術すると聞かされてたので、もう一度麻酔を打つかと思われたが、先生の判断で、腰椎麻酔のみで行なう事に急遽決定。産声が聞けるとおもったらうれしくなった。「よろしくお願いします。縦切りで行きます」この一声で手術は始まった。私の目の前にはカーテンがかかり、何も見えない。ときおり声がかかる。「大丈夫ですか?」「はい」と答えるが、呼吸が苦しくなりつい浅く息をしてしまう。「深呼吸をして下さいね」鼻から息を吸い口からゆっくり出す。心臓は飛び出そうに動悸が激しい。「酸素を入れますか?」「大丈夫だろう。このまま続行しよう」顔見知りの助産婦さんが励ましてくれる。おなかの方で何をやっているのかの感覚はまったくない。しばらくして、元気の良い産声が聞こえる。「フギャー、フギャー」え?これ、律の?律の声なの??生まれたの??無事なの???すべて声にならない。少しして、助産婦さんが、おくるみにくるまった真っ赤な赤ん坊を見せてくれた。「男の子よ」「・・・・・・・・・」何も言えず、涙が止まらない。「保育器にすぐ入れなくちゃ行けないから連れてくね」涙でぼやけた視界から赤ちゃんが遠ざかっていった。
 縫合が始まったら先生が代わったらしい。研修医の先生だろうかえらく手間取っている。今まで何も感じなかったおなかに引っ張られるような感覚が戻ってくる。麻酔が切れても縫い終わらなかったらどうするんだろう!?「それじゃあ糸が短すぎるよ」「今度は長すぎる」「ちがう!そこじゃないだろ!!もっとこっち!!!」おいおい・・・ヾ(^_^;私の腹に何すんだ!!!(笑)
 何とか麻酔が切れないうちに終わったらしい。管類が外されていく。また手術台からストレッチャーに移され、病室に戻る。

《以下だんなの日記より》
 3時23分、エレベーターを通して、絞るような赤ん坊の泣き声が聞こえた。もしかしたらと思ったが、どうも生まれたての赤ん坊とは違う気がする。27分、またも聞こえる。やはり生まれたてとしては声が太い気がする。
 エレベーターが2階に長時間とまった。3階にも止まった。そして4階。中から保育器が出てきて、赤ん坊が入っている。意外と小さくないので、まさかとは思いながら看護婦さんに聞いてみた。「これ、うちですよね?」「そうですよ。おめでとう御座います。男の子です。オチンチン付いてますよ」
 1ヶ月以上の早産だから、もっと未熟な状態を想像していたが、きちんと元気な赤ん坊だ。写真を取り捲ってお医者さんにお礼を言った。恵美子は縫いあわせが有るので、もう少しかかるという。
 まず店に電話して、恵美子の実家・会社・友人に電話。あまりに突然の出産で驚いて、みんな言葉少なになってしまう。
 看護婦さんから言われて、病棟内を歩いて外来受付に行く。つまり、律の入院手続き。毎度の事ながらお医者さんと事務の態度のギャップにはぎょっとする。どういう考えで、これほどまで感じ悪く対応できるのだろう。お役所仕事の代表である市役所の窓口も、最近は結構親切。「保証人の印鑑が同じではまずいですか?」「うちはね、良いとは言えないんだよね」「はい、分かりました」保証人は母親。腹芸を察して、勿論同じ印鑑を使った。事務なんて書類が通りさえすればいいんだよね。なんてったって、病名の無い診断書を平気で作ったり、書類を無くしてしまう事務だから。
 事務の指示通り小児科の6階に行き書類を出す。看護婦さんが「4階で書類をもらってきませんでしたか?」という台詞が気になった。なにやら家族構成まで有る書類を書いていると、若い男のお医者さんが横に立っていた。まるで漫才コンビの様なタイミングの二人は、僕の質問を分担しながら、律が極めて元気であることと、万が一の可能性をいくつも説明してくれた。このあたりは、母親の癌手術の時と同じだ。
 終ってから看護婦の説明があると聞かされたがなかなかお声がかからない。未熟児室の中では、4名の看護婦が真剣な顔で討議している。律よりむしろ恵美子が気になっていたので、書類が書き上がっている事を理由にして声をかけてみた。すぐに看護婦さんは出てきてくれて、中に入って赤ちゃんに会いますかと聞く。側によりたいのは山々だが、どちらかといえば恵美子が心配。それでもせっかくだから中に入ることにする。
 手間がかかった。撮影していいかと聞いたらフラッシュ無しならという。ところが外からカメラを入れられないので、使い捨てカメラを中で渡すという。疑問。使い捨てカメラはフラッシュ無しで室内撮影は無理。それを伝えたらポラロイドという。中にあるのは600シリーズ。いずれにしてもフラッシュ無しでは無理だろう。「僕、写真屋なんですけれど」写真はさっき撮ったのであきらめて扉を開ける。殺菌ロッカーから帽子と前掛けを出して身につけ、消毒液を使って手から手首まで洗う。うがい薬で消毒して、綿棒を使って鼻の穴も消毒する。紙製の使い捨てマスクをして中にはいる。外から見えていた律目指して歩くと、隣の保育器に猿のような赤ん坊が入っていた。良く見ると、出生体重が622グラムと有る。律は1950グラムだから、その3分の1以下だ。固体の発生は生態の発生を繰り返すというが、正に人間の少し手前で出産した感触。そんな赤ん坊でも元気で育っているのだと思うと、律に対して安心してしまう。保育器に手を入れて触るためには、更なる消毒が用意されていた。手を入れて触ると、ひくひくと反応する。顔を良く見ると、目鼻口が恵美子そっくり。足の爪が僕と同じで、食い込みの心配があるのだが、手の爪はすらりと伸びて恵美子に似ている。赤ん坊とは良く言った物で、真っ赤な身体に立派な産毛が生えている。
 一番気になる恵美子の状態。4階にもどって病室に行こうとすると、看護婦さんに引き止められる。本当は6階に行く前に4階で書類を書くことになっていたらしい。「事務では、子供というと全部6階だと思っていますから」しかし、6階小児科の柔軟なはからいで、4階でもらうはずの種類の処理も済んでいた。
 病室に入ると、手術前と同じ様子で、恵美子はベッドに横たわってた。近づくと泣き出した。デジタルカメラの画像で律を見せたり話をしたりして落ち着かせた頃、黒田先生がやってきた。「今だから言えるけれどさ、ひやっとしたんだよ。逆子より恐い横向きだろう。足を引っ張ってよじるようにして出したんだ。結構危なかったよ」本当に「今だから言える」話だ。ということは黒田先生が手術をしたんだ。産科ボスの黒田先生。鉄面皮ながら最近笑うようになった女医。当直の若い男の先生。オバQの小池さんみたいな先生。内科の先生が2人。さっき説明を受けた2人が小児科の先生。途中お世話になった先生を数えると、10名以上の医師団が恵美子の出産を支えてくれたんだ。天皇家なみかな。
 しばらく一緒にいて6時前、帰ろうとしたら恵美子が再び泣き出した。「帰っちゃ嫌だ」と、手を握りかえしてくる。あまりにはっきりした意思表示だったので、最後までいられるように店に電話を入れることにした。ところが電話をするだけだと言っても、駄々をこねるばかり。何度も何度も言い聞かせて、鎮静剤を打つと先生が言ったのをきっかけに電話をかけに出た。
 エンドレスでも大丈夫にして病室に戻ると、鎮静剤が聞きはじめたらしく、恵美子はうとうとした。手を握ってやると握りかえしてきた力が次第に弱くなり、静かな呼吸で眠りに入った。しばらくそのままいたが、血圧を測りに来た看護婦さんに聞いたら、おそらくこのまま眠り続けるだろうとの話。まるで良い夢を見ているかのような恵美子をお任せして帰路についた。

9月6日15時25分 1850g 男児出産  命名 近藤 律(りつ)

9/7(火)
 この日はほとんど昏睡状態。点滴、ホルダー心電図、導尿、酸素吸入とそれぞれの管がついたまま。この状態では律に会いには行けないので、ひたすら寝る。午後になって面会時間にお義母さん、だんなと続けて来てくれた。お義母さんが、「お疲れ様、おめでとう」と言ってくれたのがとてもうれしかった。

9/8(水)
 点滴とホルダー心電図以外の管類が抜かれた。もう少しづつは歩いた方がいいと言う事で、4人部屋に移る。NICUには点滴が抜けないとは入れないそうだが、窓越しになら見られるという。面会時間の3時を回った頃だんなが来てくれた。車椅子に乗せてもらいだんなと付き添いの看護婦さんとともに6階のNICUへ行った。律の体重は産まれた時よりも減っていて1840gになっている。律の担当の看護婦さんがいろいろと説明してくれる。元気であること、体重の減りは普通であること、今日20ccのミルクを飲んだこと、心配していたインシュリン分泌の異常も無さそうなこと。それを聞きながら思わず涙を流してしまった。一番心配していたインシュリンの影響がなかった事がすごくうれしい。
 窓のそばに律の入った保育器を運んでくれて、窓越しのご対面。産まれた時にちらっと見ただけだから、今度はまじまじと見る。まだ涙が止まらなかったが、律ちゃん!と何度もよんでしまった。「夢見たい」とつぶやく。この子がほんとに自分のおなかの中にいたんだろうか、こんな私でも出産できたのか、と思うとほんとに夢のようだ。また明日面会に来るよと言って、車椅子に乗った。

9/9(木)
 お昼ご飯を食べて、休んでいると看護婦さんに呼ばれた。内科に受診すると言うので、また車椅子に乗る。てっきり糖尿病の方だと思っていたら、高血圧の方だった。先生の話しでは、高血圧の薬を飲んでいる場合、母乳はあげられないと言う。唯一、「ぺルジピン」という血圧降下剤で点滴のタイプなら今のところは問題は出ていないが、100%安全とは言えない。内服薬ではやはり母乳に影響が出ると言う。どうしますかとの先生の問いに答えられなかった。結論は良く考えて、産科の先生に伝えればいいと言うので、外来を後にする。また車椅子に乗り、看護婦さんが迎えに来てくれるのを待つ。その間に胸が苦しくなって来て吐き気が襲う。迎えに来てくれた看護婦さんに伝える。急いで病室に戻り、ベッドに横になったとたん、涙が零れ落ちた。初乳だけでもあげたかった。私のからだの都合で、胎児には何も問題なかったのに、無理矢理胎内から出してしまった上に母乳も上げられないなんて・・・と落ち込みつづけた。カーテンを閉めて泣きまくった。同室のみんなが心配して声をかけてくれた。でも涙が止まらない。同室の経産婦さんが初乳を飲ませなくっても大丈夫。自分なら危険性がある薬入りの初乳をあげる事より、ミルクを選ぶと言ってくれた。そうだよ。ミルクだけで育った子だってたくさんいるんだ。初乳を飲ませなくってもどうってことないじゃない。といったんは涙が止まった。夕方になりだんなとお義母さんがお見舞いに来てくれた時にまたメソメソしてしまった。お義母さんもだんなの時の話しをしてくれて初乳をあげなくってもダイジョウブと言ってくれた。
 担当の先生が来るのを待っていたが、7時の面会時間が終わってしまうので先にだんなに車椅子を押してもらい律のところへ行った。今日の体重は1855g。看護婦さんが「ミルクを飲む量が増えたら点滴が外れます。たぶん、来週に入ると保育器から出て、4階の新生児室に移ると思います」そうなれば抱くこともできる。元気そうな律を見て決心した。病室にもどり担当医が来た時に、笑顔で母乳は与えないで育てる事を告げた。

9/10(金)
 また頭が割れるように痛い。点滴はとれたが心電図はまだつけたままだ。頭の痛みを氷枕でごまかしながらだんなの来るのを待つ。トイレに立って頭痛がピークになる。トイレの鏡で自分の顔を見ると驚くほど白い。ゆっくりゆっくり歩いていたらだんなが来ていた。少し休んでから6階へ今日は自分の足で歩いていく。点滴も取れたので、中に入る事が出来た。今日の律の体重、1825g。ミルクも1回30ccに増えていた。「ミルクをあげますか?」と看護婦さんに言われ、「いいんですか?」と答える。どきどきしながら保育器の中に手を入れて初めて律に触る。ミルクを看護婦さんに教わりながらあげる。大きな口を開けて元気良く飲む姿にまた涙が零れそうになる。抱き起こして背中をさする。ゲップは出なかったが、私の体力が限界に近づく。今日はそこまでにして6階を後にする。

9/11(土)
 律、生後5日目。今日も律に会いに行く予定で、だんなと6階で待ち合わせたが、お昼の検温の時に血圧が上がっていたので、再検査するまで動いてはだめと言われた。今日は律に会いに行けないかもしれないと思うと、涙があふれてきた。待ち合わせた時間に6階にいなかったので、だんなが病室まで来た。だんなの顔を見たらまた泣けてきた。再検査するまで、落ち着かなくては血圧が下がらない。とだんなに言われて一生懸命深呼吸をする。15分ほどたって看護婦さんが血圧を測りに来た。前回より少しだけ下がっていたので、面会に行けるかどうかドクターに聞いてくれると言う。少しして短時間なら行ってもいいと許可が出た。
 今日は私だけでなくだんなも未熟児室に入る。看護婦さんが少しだけならと言って、初めて保育器から出して抱かせてくれた。泣きもせずにちょっぴり目を開けて私の顔を見た。だんなに渡すと困ったような顔をして受け取った。怖いと言ってすぐに私に返してくる。もう父親になったんだから、馴れてもらわなくては困っちゃうよ。
 夕食を食べたあと、急にまた頭痛が襲う。頭が割れるような痛みと吐き気。ナースコールを押し嘔吐。コールに答えた看護婦さんに何も言えないでいたら同室の人が説明してくれた。血圧測定した後、ベッドに寝たまま個室に移される。またホルダー心電図、導尿、点滴の管が体に入れられる。真っ暗にした部屋の中で更にアイマスクをかけ、安静にする。個室に移った時点で吐くものもなくなり次第に落ち着いてくる。ドクターが来て診察してくれる。看護婦さんが血圧降下剤を舌下に入れてくれて、精神安定剤を飲ませてくれた。薄れていく意識の中で思っていたのは「また律に会えなくなる・・・」という事だけだった。

9/12(日)
 状態は落ち着いている。ドクターがまた来て診察後、明日CTを撮ると言う。この日はとにかく安静にしていた。

9/13(月)
 昨日、今日と状態が落ち着いているので、ホルダー心電図以外の管類が全部取れた。ドクターが来て具合がよさそうなのでCTは中止になったと告げられる。室内の歩行の許可が出て、車椅子でなら律に会いに行ってもいいとの事。看護婦さんに付き添ってもらって、会いに行く。律は保育器から出てコットに移っていた。体重1892g。ミルクをあげてもいいと言うので、腕に抱き小さな口に哺乳ビンをくわえさせる。30ccのミルクをコクコクと喉を鳴らしながら飲んでいる。たてに抱きゲップをさせる。母親になったんだという思いで胸がいっぱいになる。
 今日律の血液を取って、検査をしているので早ければ、明日には4階の新生児室に移れるという。4階にくれば、今迄以上に抱ける!お世話の仕方も教えてもらえる!!一気に目の前が明るくなる。4階に来たらすぐに知らせてもらえるのか聞いたらもちろんすぐ知らせるとの返事をもらった。楽しみ!!!

9/14(火)
 帝王切開の傷の抜糸(今はホチキスだからばっこうというらしい)を半分だけした。心配されていた傷のくっつきもいいそうだ。気分もよく血圧も安定している。今日も律に会いに行く。体重も順調に増え1886g。病棟に戻ったら状態もいいので4人部屋に移された。

9/15(水)
 今日、残りの半分の抜糸がすんだ。シャワーの許可が出る。久々のシャワーはとっても気持ちがいい。きれいになった所で律に会いに行った。今日の体重、1902g。ミルクも1回40ccに増えた。
 看護婦さんから、意外な事を聞いた。4階はこれから工事が入るので、律はこのまま退院まで6階の未熟児室で見る事になったという。月曜日からまだかまだかと楽しみに待っていたのに・・・。午後1時と4時の授乳時間には面会してもいいといわれたので、1時には4階病棟の検温時間だからずらしてもらえるかどうか聞いてから返事すると伝えた。
 4階に戻って看護婦さんに律が4階に降りてこない事を伝えると、そんなことはとっくに知っている。何が言いたいんだというような態度。憤りを押さえながら1時の検温時間をずらしてもらえるかどうか聞く。授乳に行く前にナースステーションに寄ればいいという。部屋に戻ってまた泣いてしまった。病院の工事のために律と離れているのに、それに対してこちらから聞くまで何も言ってもらえなかった事、何日も楽しみに待っていたのに看護婦さん達はとっくに知っていた事、期待に裏切られて打ちひしがれている私に対してベテランのはずの看護婦の冷たい反応など、考えれば考えるほど悔しくって泣けてくる。その夜は一晩中眠れなかった。

9/16(木)
 朝検温に来た看護婦さんに婦長さんは今日来られるのかを聞いた。一晩考えて、婦長さんに全部話そうと決心した。午後から来るというので、お話しが有ると伝えてもらった。午後になって婦長さんと話したところ、律が4階に降りてくるというのは小児科医の勘違いというか、早とちりで、今迄もそういう例はないという。工事は関係ないそうだ。どうも6階との連絡がちゃんとしていない。4階の婦長に問い合わせすらきていないのに、患者に先に話す事はおかしいので、小児科医の方にどういうことなのか、確認するという。冷たい態度をとった看護婦については婦長である自分の教育が悪かったので申し訳なかったと謝ってくれ、厳重注意しておくとの事。昨日、今日と旅行に行っている、だんなが帰ってきた頃を見計らって電話をし、状況を説明した。「律が新生児室に来られないのなら私が入院していると自由に会う事も出来ないし、退院を迫ってみようと思う」と話した。

9/17(金)
 今日担当の先生が来るかどうか、看護婦さんに確認。お話しがあると言うと連絡を取ってくれた。すぐに来た担当医に退院を迫る。「私の血圧は退院すれば落ち着きます。白衣性高血圧も入っていますから。」うーんとしばらく考えていたが、了解をもらった。すぐに内診してくれて、明日退院してもいいと言ってくれた。そのかわり、1ヵ月検診の前に2週間で一度来て下さいと言われた。
 律に面会に行く。明日退院できる事を担当の看護婦さんに伝えた。律はまだ未熟児室に居残りなので、しばしの別れ。でも体重は1928gになり、ミルクの一回量も45ccに増えた。退院指導を受け、お見舞いに来てくれただんなにまとめた荷物を渡す。いよいよ明日は退院だ。

 

 

9/18(土) Emi退院

10/3(日)律 2550g突破!! 退院(^_^)v

10/17(日)出産予定日